息子のまるがゲームにハマってる。
その名はフォートナイト。
基本プレーは無料でいわゆる銃とか弓とか武器で敵をオンラインで倒していくゲームだ。
課金はアバターの装飾品など。
まるはスイッチ、俺はスマホで一緒のチームで戦うこともしばしば。
今までサッカーだろうが、徒競走だろうが、足の臭さだろうが、まるに負けることはなかった。
だが、これだけは話が違う。
何度やっても負けてしまう。
確かにスマホの操作性で不利なのは否めない。
にしてもだ。
明らかに足手まといになっている。
たまにまるの友達と4人チームになってビクロイ、つまり優勝を目指すのだが特攻隊で敵に30ほどダメージを与えては死にそうになり、仲間に復活させてもらう。
俺の地位も地に堕ちた。
サッカーチームの子の仲間が多く、たまに一緒にサッカーもやっていた。
完全なるフィジカル差で王様のように優雅にプレーして、子供の淡い希望をズタズタにしてきた俺。
フォートナイトのせいで完全に下に見られるようになった。
なんならカス呼ばわりまで。
カスってあれですわ。
俺の中で、クズ、カス、クソなど色々あるキーワードのぶっちぎり下。
あぁ、こうやってカーストが作られていくんだと実感した。
ゲーム業界も親子の接点を持つためのゲームという観点から、親を優遇するようなステータス追加とかもう少し考えて欲しい。
昨今親子の関係が希薄になり、醜い争いでニュースを賑わすのも目にする。
もしかしたらゲームによって変えられるかもしれない。
思春期になっても親と笑いながら一緒にゲームに興じる。
そういうくだらない思い出が、後に最後の一線を超えさせないこともあるのではないか。
俺はすぐに行動をおこした。
まずはゲーム業界の調査だ。
仕事の時間も削り、世の子供のため、親のために奔走した。
寝る間も惜しみ、大切なお客との打ち合わせにも代理としてPepper君に任せた。
雨の日も風の日も地震の日すら地割れを飛び越えて走った。
だんだん俺は神々しい能力も身についてきて、モーゼと肩を並べるくらいになった。
山折りにして立てた折り紙を右手で両のほっぺたを撫でてから、近づけると折り紙が進むなんてお手の物。
そしてついに俺はフォートナイトの製作会社に連絡することを思いついた。
何事も最後までやり遂げろと息子のまるには言ってきた。
梅干し以上に酸っぱく。
ごくり。
言ってやる、思いのたけをぶつけてやる。
運命のご対面。
ホームページに無表情で羅列された電話番号を二度見しながら慎重にスマホを押す。
プルルルル
Hi, how may I help you?
・・・
俺は静かに通話終了ボタンを押した。