こんばんは。
お待たせしました。
お悩み電話相談コーナーの時間です。
今日のゲストは。
教科書さんです。
すでに繋がってますのでどうぞ。
もしもーし。
もしもし、こんばんは。
お名前を教えて下さい。
別名New Horizonです。
すいません。
本名でお願いします。
いや、名字が別名で、名前がNew Horizonなんです。
失礼しました。
確かに履歴書の備考欄にそう書いてますね。
結構、みなさん備考欄にさらっと重要なことを書かれるんですね。
あっ、ちょっと良いですか？
私こう見えて観察眼が鋭いって昔から言われてまして。
細かいことに気付いちゃいました。
履歴書をよく見るとNewとHorizonの間が空いてるんですね。
それにNとHも大文字です。
ズバリ、Newはミドルネームですよね？
いえ、違います。
たまたまです。
失礼しました。
履歴書の裏にも書いたんですが、
40歳の時に思い切って改名しました。
新しい自分になりたくて。
チラ裏ですか。
そこまでは気付きませんでした。
私って最後の詰めが甘いんですよね。
やはりアレですか。
名前を変えて、住所も変えて、電話やSNSも全て変える。
今までのしがらみを全部捨てたんですよね？
いえ、違います。
改名のみです。
失礼しました。
どういうきっかけで改名したのか差し支えなければ教えて下さい。
そうですね。
あれは確かどこかの場末のスナックで女一人淋しく飲んでたんですよね。
お客さんは私と男性グループ2組。
常連っていう感じでママと仲良く話してたんですね。
内容はほぼ下ネタで耳を塞ぎたくなる話ばかりで。
ここに女がいるんだぞって睨んでも全く効果なしで。
もういいやと思って本を読んでたんですね。
そしたら、何、難しい本読んでんだよって常連に絡まれ出して。
何の本を読んでたんですか？
英語の教科書です。
あっ、失礼しました。
あまりにも絡んで来るのでいい加減頭にきたんですよ。
ほっといてよっ。
こう見えて爪の形はキレイだねって褒められるんだよっ。
と、思わず叫んでしまいまして。
そしたら、後ろからポンポンと肩を叩かれたんです。
誰？と振り返るとおじさんが立ってまして。
いつからお店にいたのか気付かないくらい興奮してたんですね、私。
お嬢さん、落ち着いて事務所で話しましょう。
ってそのおじさんが言ってきて。
お店の関係者かなと思ったんですけど。
あっ、すいませんでした。
つい癖で。
とそのおじさんは謝ってきました。
何だか私も怒りが冷めちゃって。
何となくそこから一緒に飲み始めてですね。
大人の階段を一気にかけ登ったわけですね？
いえ、単なるおしゃべりでその日は終わりました。
失礼しました。
次の日に海でも行きたいな～ってお台場に行ったんですよ。
そしたら、そのおじさんに偶然会ったんです。
レインボーブリッジで。
ちょうどドラマの撮影をしてたんですが、ちょくちょくそのおじさんが邪魔してるのが見えました。
撮影現場の雰囲気が、このままこの人キャスティングしない？
ってなりまして。
監督がついにおじさんのシーンを台本に追加されたんですよ。
いい味出してたんでしょうね。
やたらと事件が現場で起こったぁって叫んでましたし。
あれは相当興奮してましたね。
なるほど。
すいませんが、そのおじさんの名前は藪柑子の藪柑子さんでしたか？
いえ、お名前はお聞き出来ませんでした。
区切りがどうとかブツブツ言ってたので。
そうでしたか。
もう近づかない方が良いですよ。
お知り合いなんですか？
いえ、他人の空似です。
そろそろお悩みを聞きたいのですが。
あぁ、そうでしたね。
悩みなんですけど、最近みんなが私を見てくれなくて。
他教科の教科書はみんなよく見るのに。
私、何かしたっけと不安になっちゃって。
もう、どうしたらいいのか分からなくて。
そんな理由で申し込みました。
いつからでしょうか。
そうですね、あれは今年の秋かな。
ちょうど半分くらいのページまで進んだ頃ですかね。
左右のバランスがいいんで開いて座ってたんですよ。
はたからは立ってるように見えるというか。
そしたら、何か女子が汚い物を見る目で私を見てくるんですよね。
なるほど。
たまたま開いていたページは関係ないですよね。
どこ開いても大体、日本人と外国人の日常会話ですから。
えっ？
外国人は出てこないですよ。
えっ？
でもあなたの名前は。
ページ数の少なさにコンプレックスがあって、他教科の名前に改名したかったんですよ。
私、保健体育の教科書なんです。
ちなみに開いていたページは、おとことおんなのから
プゥープゥープゥー・・・
