ここだけの秘密ですが。
巷で噂のヒーローって俺のことなんですよ。
困ってる人を見つけてサクッと助けちゃおうかと思ってですね。
生活保護に頼ることなく最近新しいタイプのヒーローになったんですよ。
サブスクリプション型ヒーローです。
月額課金制で何度でもあなたを助けます!
かっこよくないですか?
何度でも助けられる。
このご恩は一生忘れませんっ、ていうやつを月に3回くらい言うチャンスもあるんですよ。
こんな感じで他のヒーローと差別化を図ってですね。
そんな時とある未亡人から案件が飛び込んできた。
どうやら毎日色々な人から告白されて怖いから助けて欲しいそうだ。
もちろん仕事とはいえ期待するシチュエーションだ。
とはいえ俺は責任感が強い。
途中で投げ出すような丘ヒーローでもない。
待ち合わせは新宿の喫茶店。
匂い立つほどの女がそこにいた。
いける。
直感でそう思った俺がいた。
こんにちは。
俺はありったけの笑顔をぶつけてみた。
・・・
何も返事がない。
すでに死んでいるようだ。
諦め悪く話しかけてみる。
ご依頼の方ですよね?
女は言う。
右に7歩、左に3歩歩いたところを調べるが良い。
何を聞いても同じことの繰り返し。
ロールプレイングゲームの町人Aかと。
からかわれたのか。
まぁ、いいさ。
依頼主が途中でバックれることも多々ある。
俺は焦らない。
何故ならね。
目の前の彼女の腕に巻かれた高価な腕時計を見逃さなかった。
おっけーおっけー。
金にちょうど困ってたところだ。
そのうち彼女はつまらない顔をしながら踵を返して向こう側に歩いていった。
周りには誰もいない。
俺は右手で斧を持ち、素早く彼女の背後に回り込むと一気にそれを振り下ろした。
ザクッ
女は白目を剥きながらも相変わらず右に7歩と言っている。
雨はまだ降り続いている。
続く