私、桃子。
小学校ではピーチ姫って呼ばれてる。
そして私の王子様、まる君はさしづめマリオってとこかしら。
サッカーばかりやってるまる君。
そのせいか、ちょっと足が臭いのは難点。
ってか、少しクリボー臭い。
今日も元気に登校してるとピンクコースからまる君登場。
黄色い帽子がいつもよりオシャレに見える。
やだ、あたし。
ちょっとどころじゃなく恋してる。
”まる、おはよう”
”おはよう、姫”
殿ぉ～、って言いたいのを必死に抑えたのはここだけの秘密。
何気ない会話で学校まで歩く。
至福以外の何ものでもない。
クラスはお互い違うので下駄箱でバイバイ。
いつもと同じ風景だけどあと何年この幸せが続くのだろう。
2時間目の放課。
まる君が外に出てどろけいしてる。
私も交じりたいけど、女同士の不文律がある。
恋のライバルが多すぎて嫌になる。
逸脱しようものならスクールカーストの底辺まっしぐら。
そんなの嫌だ。
恋もしたいけど普通の学校生活も送りたい。
あぁ、どうしたらいいの。
まる君と自然に隣同士にいる方法ってないのかな。
ほむらはいいなぁ、席が隣で。
雪見だいふくみたいに2つで1つが当たり前の関係になれないかな。
先にまる君が食べられても平気。
”あっ、お先っす”
と言われてもおなかの中でまた一緒になれるから。
最悪なのは別々の人間に食べられること。
”あれっ？隣にいるのちがくね？”
って思わず言っちゃいそう。
そんなどうでもいい話は置いておいて。
私、決めた。
まる君のお嫁さんになる。
そのために綺麗になる。
まずはママの化粧品をこっそり使って女子力アップ。
次にダイエットもしようかしら。
身長140センチで体重30キロだからあと2キロは削りたい。
体毛全部剃れば2キロくらいいけそうかも。
いやいや、この年で丸坊主は厳しいでしょ。
でも大人はウィッグつけるのもオシャレの一つなんだよね。
ここは個性を出すために、ブーツィー・コリンズみたいなアフロヘアでファンク色を前面に。
いやいや、さすがに小学4年生にしてブーツィーはないわぁ。
適当に久保田利伸で濁してっと。
もっと私を見て欲しいな。
男の子と遊ぶのも良く分かる。
ディエルマスターズのカードにはまるのも分かる。
私っていう存在を意識してもらうには毎日のちょっとした工夫が必要かな。
毎朝、その日暮らしのなく頃ばりに出題編と回答編を繰り広げようかしら。
でもそれって痛い子だよね。
あぁー、悩むぅ。
私って恋する女子って感じでイケてるわぁ。
今なら空も飛べるはず。
