俺の息子のまるがぶつぶつ言いながら家でボールを蹴っている。
よくよく聞くとこんな感じだ。
”はいっ、それでは今からリフティングを始めたいと思います”
まさにyoutuber。
最近カードゲームやサッカーゲームのyoutubeばかりを見ているせいかも知れない。
”ぱぱぁ、俺youtuberになりたい”
ですよね。
そんな気がしたよ。
親バカな俺は身バレしないようにブーツィー・コリンズばりのアフロのつけ毛とサングラスもamazonで買った。
youtuberになりたいという息子のために。
でもさ、いざとなったらやっぱ怖いんだよね。
口の軽い息子から身バレしたことを考えるとちょっと怖い。
やめとけっ、って言うのは簡単だけど安易に逃げたくない。
今のところ、まだなりたいっていうだけで実際にやってみたいとは言われていない。
時が来るまで押し入れにブーツィー・コリンズは寝かせておこう。
たまに押し入れからファンキーなビートを刻んでいる気がするが多分疲れているせいだろう。
ところで、俺もyoutuberなる職業には注目している。
ありきたりなものが多いな、という印象。
特に○○をやってみたというシリーズ。
色々なyoutuberが提供している。
やってみた。
俺も何か出来るか。
あれは雨の日だったと思う、いや曇り?、もしかしたら晴れだったかも知れない。
出社するため最寄りの駅をテクテク歩いていくと後ろから気配を感じる。
一定のスピードで歩いていると自分より微妙に速いステップで近づいてくる人間を感じたことはあるよね。
そして、その時が来た。
抜かされる時である。
あれっ?お前さっきより速くなってね?
ってくらいスピードがあがってくるのが嫌でも感じる。
そこでやってみた。
俺もやつに合わせて同程度のスピードにギアをチェンジしたのだ。
さらに、一旦歩道から車道に出るというマシューズフェイントもかましつつ。
するとどうだろう。
やつはスピードを調整して、またしても俺の後ろに陣取ったではないか。
何だか拍子抜けでまた元のスピードに戻す。
するとやはりまたその時が来た。
前回よりも若干スピードがあがっているのが、カツカツ音と鼻息の荒さで分かる。
二回戦に突入した。
俺もいい大人であり、こんなバカげたことをしたくない。
でも何となくやってみた。
結果から言うと負けた。
ぼろ負けである。
やつは右側の歩道から斜めに舵をとり、左の歩道に渡ったのだ。
多分マッハ5で。
俺も引き出しの多さは自負しているので、今回はマシューズではなくシザーズフェイントにしたのに。
そして、最寄り駅に到着した。
後方へ移動する。
何となく俺のセブンセンシズが後ろから二両目のドアから入れと騒ぐのでそれに従う。
やつがいた。
余裕の表情で座っている。
自分の事を神と思っているようなふしすら見える。
俺はやつの前でカツカツ音で颯爽と横切ってやった。
ひひひ。
やってみた。